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Whisky Meeting 2003 in Yamazaki Distillery

レポート&テイスティングノート  惹樽 記

 サントリー山崎蒸留所で開催された「Whisky Meeting 2003 in Yamazaki Distillery」の第2部に私(惹樽)とW氏の2人が参加した。私は8月の原酒テイスティングツアー9月のSMWS(ソサエティ)日本支部10周年記念イベントにも参加しているので、わずか2ヶ月ちょっとの間に、3回も山崎蒸留所を訪れたことになる。

 しかし今回も、原酒テイスティングツアーにでた「ミズナラ樽 1960年」に負けず劣らずレアな「ボウモア1957年」という稀少モルトをテイスティングできたということで、大満足であった。

 今回私がテイスティングしたのは下記のモルトであるが、フリーティスティング会には他にも興味深いモルトが出されていた。後でセミナーがあるので控えめにしたつもりだったのだが、時間がわりとあったので結果的にはかなりの数をテイスティングしたことになる。それでもあれもテイスティングしておきたかったという物が残っており、やはりセミナーを先に開催して欲しかったというのが、今回唯一不満だった点である。

フリーテイスティング会

1. THE CASK of YAMAZAKI HOGSHEAD 1993 55%

2. THE CASK of YAMAZAKI HOGSHEAD 1990 60%

3. THE CASK of HAKUSHU BOURBON CASK 1988 62%

4. THE CASK of HAKUSHU PLUM WOOD FINISH 1992 57%

5. THE CASK of YAMAZAKI JAPANESE OAK CASK 1979 58%

6. 白州蒸溜所30周年記念限定モルト 43%

7. THE MACALLAN GRAN RESERVA 18年 40%

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●第2部 特別セミナー

「デイブ・ブルームが誘う、シングルモルトの楽しみ」

8. 山崎 12年 40%

9. THE BALVENIE DOUBLEWOOD 12年 40%

10. AUCHENTOSHAN 1965 31年 43.5%

11. BOWMORE 1957 38年 40.1%

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●フリーテイスティング会

 13:30に受付を済ませ、さっそくウイスキー館1階のテイスティングルームでテイスティング開始。

 まずは2003年11月11日に新発売される「THE カスク シリーズ」から(白州は追加発売)。でもボトルに書いてあったのとホームページの記載でアルコール度数が違っているのはなぜ?よく似てはいるけど違う樽のものということなんでしょうかね。下記はボトル記載の度数です。


***[No.1] 
THE CASK of YAMAZAKI HOGSHEAD 1993 55%  ***


ヘビリーピーテッドの山崎。

(色)黄色が強いゴールド。

(香)アードベッグに似たスモーキーなピート香。奥には麦芽本来のモルティな甘さも感じられる。

(味)モルトの甘さとスモークが別々に存在している印象がある。決して喧嘩はしていないが、引き立てあっている感じでもない。フィニッシュはビターで短め。加水すると甘さが柔らかく飲みやすくなる。麦芽の甘さを強く押し出すスタイルはアイラには見られないもので、そういう意味では面白い。

ソサエティが日本支部10周年記念ボトルとした119.4によく似ている。ブラインドで出されたら特定できないだろう。飲み比べてみると面白そうだ。



***[No.2] 
THE CASK of YAMAZAKI HOGSHEAD 1990 60%  ***


こちらはピートが強くない通常のモルトを使っている。

(色)ややくすんだゴールド。

(香)フルーティーと蜂蜜を強く感じる。サンふじという品種の林檎(果実に蜜が入り甘みが強い)を連想した。

(味)香り通りの蜂蜜とフルーツの甘さだが、加水するとビターになる。

ホグスヘッドということだがバーボンの影響を強く感じる。アメリカンホワイトオークとしてあるので、バーボン樽を組みなおしたということであろう。スペイサイドのモルトに時折見られるタイプで、これは結構気に入りました。

山崎のモルトは白州に比べるとすっきりと明るい印象を受ける。



***[No.3] 
THE CASK of HAKUSHU BOURBON CASK 1988 62%  ***


前回発売時にすぐに売り切れてしまったヘビリーピーテッドの白州が追加発売。

(色)ゴールド。

(香)香りの立ちが遅く、すぐにはピートを感じないが、やがてモルティとスモークが感じられるようになる。

(味)やはりモルトの甘さとスモーク。山崎と比較するとやや暗くこもった感じがするが、これが白州の個性だろうか?葉の繁みで日が届かない林の中といった印象。

もう1本「THE CASK of YAMAZAKI SHERRY CASK 1980」が発売されますが、こちらは試飲しそこないました、というか手が回りませんでした。

今回、試験的に特別出品されたカスクものが3品ありましたが、そのうちの1本をテイスティングしました。


***[No.4] 
THE CASK of HAKUSHU PLUM WOOD FINISH 1992 57%  ***


焙煎樽貯蔵梅酒で使った樽で後熟した白州。

(色)やや赤みがかったゴールド。

(香)まさに梅の酸っぱさを思わせる酸と砂糖っぽい甘さ。

(味)アルコールの刺激が強くぴりぴり感があるが、梅酒の甘さがモルティをうまく隠していて飲みやすい。

モルトウイスキーを使って作った梅酒だと言われたら信じてしまうかも。日本人向きだとは言えそう。

2002年6月にリリースされて既に完売したズナラ樽熟成の山崎もテイスティングできました。


***[No.5] 
THE CASK of YAMAZAKI JAPANESE OAK CASK 1979 58%  ***


(色)透き通ったライトブラウン。

(香)ミズナラ樽熟成の典型的な伽羅の香り。この個性が強すぎて他の香りを感じることができない。

(味)強い刺激の中に甘さを感じる。例の1960に比較すると、やや渋みがある。フィニッシュはハッカのような刺激が鼻に抜けていく感じ。

The CASK シリーズ以外にも、多くのモルトが供されていましたが、そのうち白州とマッカランをテイスティングしました。


***[No.6] 
白州蒸溜所30周年記念限定モルト 43%  ***


(色)明るいブラウン。

(香)やや沈んだ感じのシェリー香。香りは複雑で甘さも感じられるが全体に重い印象を残す。

(味)ドライだが、やはりシェリーの影響を感じる。軽くゴムもあるが嫌な味ではない。軽く酸も感じ、フィニッシュは長い。

他に「白州蒸溜所秘蔵モルト」も試飲したが時間切れでテイスティングのメモを残す事ができなかった。30周年記念モルトのシェリーを弱くして軽さを出し、ミズナラの風味もかすかに加えてあるといったところか。秘蔵モルトのほうが分かりやすい美味しさだといえる。


***[No.7] 
THE MACALLAN GRAN RESERVA 18年 40%  ***


(色)マッカランらしいマホガニーカラー。

(香)最初にシェリー樽熟成によくあるゴムを感じ、甘い香りはかなり抑えられている。

(味)ドライでやはりゴムの風味がある。カラメルを感じるのは長熟シェリーからの影響か。以前の18年物に比べるとずいぶん甘さが抑えられている。

どうもグランレゼルバの名前に期待が大きすぎたせいか、いまひとつピンとこない。オフィシャルにありがちな作られた甘さはないのだが、高級感を狙って難しくしすぎてしまったようにも思われる。


 

●第2部 特別セミナー  「デイブ・ブルームが誘う、シングルモルトの楽しみ」

15:15から場所を大ゲストルームに移してセミナー開始。

--- サントリーのホームページより抜粋 ---
サントリーが所有・提携するスコットランドの蒸溜所のレアモルトについて、ウイスキー評論家 デイブ・ブルーム氏が、サントリーシニアブレンダー 三鍋昌春と語り合います。 ご試飲いただくのは、非常に稀少なボウモア1957年をはじめ、サントリーが所有・提携している蒸溜所のモルト計4種です。

マイケル・ジャクソン氏の来日中止はとても残念でしたが、デイブ・ブルーム、三鍋昌春両氏の話はとても興味深いものでした。三鍋氏はボウモア蒸留所等へ出向した際の経験談をスライドを交えながら語ってくれました。

またデイブ・ブルーム氏のユーモラスな話もとても楽しかったのですが、なかでも日本のモルトは特徴が分かり易いというコメントが興味深かったです。スコットランドの人が自然の力に任せようとする傾向が強いのに対し、日本人は狙った香りと味を作ろうとするということでしょうか?


***[No.8] 
山崎12年 40%  ***


(色)うすく黄色がかったゴールド。

(香)フローラルな甘さ。全体に細い感じ。

(味)柔らかい甘さで、いかにもオフィシャルボトルらしく飲みやすくまとまっている。
鼻に抜けるさわやかさは、ミズナラ樽のフレーバーか?



***[No.9] 
THE BALVENIE DOUBLEWOOD 12年 40%  ***


(色)深いゴールド。

(香)モルティが第一印象。飲み比べた相手が30年超の長熟ものだったせいか、とにかく若さを感じてしまった。焼酎や梅干のような香りも感じる。かすかにワックスと蜂蜜も。香りにボリュームがあるので、よけいに若く感じてしまったのかもしれない。

(味)お菓子のような甘さ(デイブ・ブルーム氏によるとシロップ)フルーツ系のフィニッシュは短め。

全体に野暮ったく感じるのは、きれいにまとめようとせず(オフィシャルにありがち)素の味わいを出そうとしているせいかもしれない。



***[No.10] 
AUCHENTOSHAN 1965 31年 43.5%  ***


(色)輝きのあるブラウン。グラスを傾けると液面が緑がかって見える(デイブ・ブルーム氏の指摘)

(香)カラメルとシェリー。上質な醤油のような、ややひねた香りも感じる(ブルーム氏がランシオ香と言っていたのはこれか?)。加水するとかすかなミントが現れる。

(味)シェリーの影響が感じられ、かすかなゴムがある。フルーツを感じさせるフィニッシュは長い。

熟成年数の割には力強い。3回蒸留は熟成が早いというが、一概には言えないということだろう。



***[No.11] 
BOWMORE 1957 38年 40.1%  ***


(色)深みのあるゴールド。

(香)一息嗅いだだけで陶然となるような究極のエステル香で、とにかく気持ちよくさせてくれる。さまざまなフルーツ香が混じりあい、マンゴーのようなトロピカル系とともに桃を強く感じた。ボウモアによく感じる石鹸香とピートのスモークは全く感じない。

(味)フルーティーでとても上品な甘さを感じ、オイリーでボディは非常に厚い。かすかにコーヒーも感じる。とにかく美味であるとしかいいようがない。繊細なフィニッシュは長く長く続く。また味にも例の石鹸っぽさは全く感じない。

あとでアルコール度数が40%ぎりぎりしかないと知ってとても驚いた。普段はカスクストレングスでないと物足りなさを覚えるのに、そういったことは全く意識に上らなかったのだ。

このボウモアを担当した(?)のは大酒のみだが人間においしいところだけは残しておいてくれる心優しい天使であったようだ。

 

 最後のボウモアは、私がこれまで飲んだモルトのベストワンだと思います。

 これでも自制してテイスティングする種類を絞ったつもりだったのですが、さすがにこれだけの本数になると記憶があいまいで、コメントもかなりいいかげんになっています。写真もぶれたりしてますが(酔っていたせいでもあります)、なにぶんにも素人なのでご勘弁を。

 


コニサーズクラブBBSより

★<タイトル>奇跡のモルト 投稿者/惹樽 投稿日/2003年11月01日(土)23時56分

山崎蒸留所で行われたウイスキーミーティング2003に参加してきました(Wさんも一緒)

詳しくは後ほどレポートしますが、第2部のセミナーで登場したボウモア1957は奇跡的と言っても過言ではない素晴らしいものでした。

第1部には例の山崎1960(ミズナラ樽)が登場していますし、サントリーのイベントは今後も要チェックですね。

▼投稿者/ harazaki 投稿日/2003年11月02日(日)2時32分

ボウモア1957ですか。一口でも飲んでみたいものですね。50年代に蒸留したものとなると瓶詰めも最近ではないものなのでしょうか。「モルト(アイラ?)の女王」、「ボウモアに始まりボウモアに終わる。」の比喩があるボウモア。古いものとなると、やはりシェリーカスク?

最近の60年代のボウモアにあるいわゆる「パパイヤ臭」ありましたか?レポートを楽しみにしています。


★<タイトル>ボウモア 1957 投稿者/惹樽 投稿日/2003年11月02日(日)9時06分

以前にどこかで読んだ話で、ボウモアが個人に買い上げられた樽を調べたら内容量が大幅に減っていたので、違う樽に詰めなおし、テイスティングしたら非常に素晴らしかったので、所有者の未亡人から高額で買い戻したというのが、これではなかったでしょうか。

▼投稿者/ 惹樽(管理人) 投稿日/2003年11月02日(日)17時00分

いくつかの酒販店のホームページになかなかのお値段で出ています。 ボトリング本数(861本)からすると複数の樽をヴァッテイングしていますね。そのキーになっているのが上記のモルトということだったのかな?

▼投稿者/りょりょう 投稿日/2003年11月03日(月)15時01分

ボウモア1957ですが、2000年にVoyage Duskとともに発売されました。このモルトはこれ以上熟成させると40%をきってしまうので瓶詰めしたということです。

わたしも飲んだことがありますが、たしかにすばらしいものでしたね。

それと、ボウモア蒸留所が個人所有の樽を買い戻したというエピソードのモルトは、ボウモア40年だとおもいます。このモルトについての説明を貼り付けます。

1997年に発売されたボウモア40年。294本の限定販売。 これは1955年にある顧客が注文したオロロソシェリー樽で、その後20年間蒸留所の熟成庫で眠っていたもの。 1975年にボトリングしようとしたところリーク(亀裂)が見つかり通常より20%以上も中身が減っていた。そこでケンタッキーバーボンの再利用樽に詰め替え、お客に連絡したところすでに死去しているとの返答であった。 ボウモアでは遺族からその樽を買い戻し、さらに20年間寝かせたのだという。

証明書付きのボウモア40年をもってスコットランドアイラ島のボウモア蒸留所を訪れるとVIP扱い。 もちろん宿泊無料。

▼投稿者/ 惹樽 投稿日/2003年11月03日(月)15時32分

ご指摘ありがとうございました。この40年も飲んでみたいものですが、さすがに無理でしょうね。